戦跡巡りツアー、三番目は、望月町御牧ヶ原の「北佐久大運動会記念碑」ということで、今では別荘が点在している、望月原別荘地になっている山の中でした。ここも荒れ果てた山中で、辛うじて粗末な記念塔への道しるべがありますが、説明文らしいものもありません。有志の方々が草刈りなど維持活動をしているようではあります。
海軍記念日の運動会
北佐久郡の小学校高等科の子どもたちは、毎年、５月２７日になると、御牧ヶ原の運動場に集まった。遠くは軽井沢から望月まで、みんな歩いた。これは、太平洋戦争の敗戦直前まで続いた。
この日は、日露戦争の日本海海戦の日であり、海軍記念日となっていた。運動場を見おろすところに、オベリスク型の記念碑が残っている。正面の文字は塗り潰されていたが、「皇威耀八紘」と「東郷平八郎」の名とが刻まれてあった。いまは、裏にペンキの「皇威耀八紘」の文字が残されている。両脇に描かれた「Ｚ旗」は、色もそのまま残っている。皇威発揚の場でもあった。
国際信号の「Ｚ」は、船上では別な意味で使われているのだが、海戦のときは、「皇国ノ興廃コノ一戦ニアリ、各員一層奮励努力セヨ」の信号として、旗艦に掲げられ、太平洋戦争においては、真珠湾攻撃のときにまた掲げられた。
今もこの日には、「東郷元帥」の真筆をのぼりに仕立てたものが記念碑のそばに掲げられ、思い出を語る会が開かれている。(「この街にも戦争があった」より)
両脇面のＺ旗の色鮮やかさに却って不気味さを今に伝えています。![イメージ 5]()
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傍らに粗末な「運動会想い出の地」の白柱があり、側面には「健歩の礎」し記されています。下方、木々の間から、今は別荘地のサッカー場になっている運動場跡が見えます。
このツアー最後は、御牧ヶ原の県農大です。「長野県満州農業移民訓練所」跡です。これは以前から資料としては知っていたのですが、何度となく見つけに行っても分からなかったところです。現在の農大校舎とは別のところにありました。ほとんど何も残っていないのですが、当時の門柱が見られます。「長野県立経営伝習農場」とあります。裏面には「昭和十三年建立」とあります。
渡満・敗戦・逃避行
長野県は十五年戦争期、国の意向を受け積極的に満州移民を奨励した。その結果、1936(昭和11) 年頃より長野県の満州移民はさかんになり、移民者の訓練施設が県内に求められた。1936年９月「県立満州農業移民訓練所」が「県立御牧ヶ原修練農場」(長野県農業大学校営農学部)に併設された。
訓練期間は１年から１か月で女子部も設置されていた。訓練の内容は精神訓練と実地訓練が行われ、特に精神訓練は皇国運動などを中心に天皇に対する絶対的な信頼感を植えつけることに重点が置かれていた。
国策という名のもとに「王道楽土」を夢に見ながら満州に渡った人々の結末を、わたしたちは「昭和史の汚点」として忘れてはならない。(「この街にも戦争があった」より)
この門から奥に歩くと、今は自動車運転練習場となっていますが、その傍らに当時の穀物倉庫が、そのままで今に残っています。
ツアーの参加者は１５名ぐらいで、マイクロバスで回ったのですが、高齢者が多かったようです。運動会については、当時では年に一度の大イベントであり、家族揃って出かけたものだとの回想もありました。それだけ住民の生活に根ざしていたものだったようです。しかし、一枚めくると軍事国家の一大イベントであったのでした。
地元の人たちが多かったにも関わらず、自分たちの地域にこのような戦争遺跡があることに、認識を改めているようでした。やはりもっと若い人たちに参加して欲しいとの声が多かったです。また、余りにも放置されており、行政にも働きかけて保存する必要が緊要であるとの認識に至りました。
九条を守るこもろの会では、「憲法９条を守る」署名運動に取り組んでおり、有権者の過半数を達成しようと、個別訪問をしたりしているとのこと。現在１２９００名を越え、あと４６００名ほどといいます。署名を通じて対話によって平和の大切さを訴え、全国に署名活動の活性化を提起したいと励んでいるとのことでした。草の根運動から、もう一度平和憲法の意義を共有したいものです。
